シューカツノ嚮導

現役採用面接官による就職活動お役立ち情報…かもしれない

自己分析の憂鬱

【記事のポイント】

  • 自己分析ありきで就職活動を始めると、遠回りになったりする
  • 働いている人の声を聞いて、自分にフィットするかをイメージしてみる
  • 「あなたをモノに例えると何ですか?」という質問はしたことがないし、されたこともない

-------------------------------------

 

さぁ、就職活動を始めよう。何から始めたら良いだろう?

この問いかけに対しては、十中八九「まずは自己分析から始めよう!」という答えが返ってくると思います。大学内のセミナーや、就活イベントの講師、インターネットのサイトでも大体「自己分析→業界研究→書類選考→面接→内定」といった筋書きを提示してくると思います。

これは決して間違いではありません。でも、やってみると案外遠回りでしんどいと思うんです。ものすごく極端な例で書きますが

 

①自己分析をしてみた!明るくポジティブな性格がアピールポイントだ!

②明るい性格を活かせる営業職が自分に向いているのではないだろうか?

③営業の仕事を募集している企業にエントリーしたよ!

④明日は面接!とりあえず明るく頑張るぞ!!

 

という、学生さんがいたとします。

この流れには決定的に欠けている部分があるのですが、お気付きでしょうか。

実は「自分が営業職に向いていること」を検証するプロセスが、まるっと抜けてしまっているんです。

問題の工程は「②」。明るい性格の自分には営業職が向いてそうだという「イメージ」だけで突き進んでいます。

 

「営業職」とひとくちに言っても、その実態は様々です。新規の顧客を取り込むような仕事であれば、「明るさ」は大きな武器ですが、既存の顧客との信頼関係を重視する会社である場合はどうでしょう。もしかすると「明るさ」は「軽佻浮薄」と思われてしまう可能性もあります。

そうすると会社からは「ミスマッチの人材」と判定され、せっかく面接まで行けたのにお祈りメールが送られてくる事態になってしまいます。また、仮に面接が通って内定をもらえたとしても、入社後に本人が「イメージしていた仕事と違う…」と悩んでしまうかもしれません。

自分の性格や特性を知ることは大切ですが、一番大事なことは「それを志望する企業で活かせることができるか」を「現場の人に聞いて確かめる」ことです。インターネットの適職診断や就活のエージェントから「おすすめの企業」を紹介されることもあるかと思いますが、これらは自分の性格や特性が、その企業に適している「可能性」があることを示しているだけなのです。

 

この「現場の人に聞いて確かめる」というプロセスは、なるべく早い段階で済ませたほうが良いでしょう。出来ればエントリーシートを提出する前に行うのがベストです。選考が始まってからは、基本的に質問は全て記録されて合否に影響すると思ってください。面接官の「選考には関係しません」と、男性の「何もしないから…」を信じてはいけません。

では、どうやって「現場の人に確かめる」のか。

一番簡単なのは「説明会」ですが、昨今の情勢で中止も相次いでいるようなので、可能であれば是非「OB訪問」を活用してみてください。それも難しければ、サークルやゼミの先輩、兄弟姉妹など何でもいいので、とにかく「社会に出て仕事をしている人」に話を聞いてみましょう。

「仕事」の話を聞く際には、以下のポイントを押さえるようにしてください。

 

(1)「仕事」がどのように発生するか。どのように依頼されるか。

(2)「仕事」をどうやって進めるのか。何が成果物なのか。

(3)「仕事」の成果物は誰に対してどのように納めるのか。

 

大雑把な言い方になりますが、仕事は上記の(1)~(3)の順で進めるのが基本的な流れです。それぞれの工程を、可能な限り具体的に掘り下げてみてください。

例えば(1)。仕事は自然に発生するものではなく、営業が売り込みを掛ける、世論や情勢を鑑みて上層部が指示をする、現場の担当者から要望が挙げられるなど、何かしらのアクションがあって生まれるものです。この(1)は会社の性格や、年次や役職が上がったらどのような働き方をするのかを知ることに繋がります。

(2)は具体的な仕事の進め方です。仕事の最終目的は(3)の成果物(モノやサービス)を期限内に依頼者に提供することです。その成果物が何であるか、成果物をどうやって作るのか、どうやって提供するかを知ることが、会社の仕事内容の理解に繋がります。

同じ業界や業種であっても、この(2)~(3)の工程は会社によってかなり異なってくると思います。私の勤める「IT業界」でも、成果物(アプリケーション)を作るまでの工程はまちまちです。いきなりプログラミングしてすぐに納品という会社もあれば、wordで設計書やテスト項目を作成し、都度上司の判子が必要になる会社もあります。

この工程の内容を知れば、その会社に入社してからの仕事のイメージも鮮明になるのではないでしょうか。

上に書いた例でいうと、「プログラミングをしてすぐに納品する会社」は几帳面な人や心配性な人にとっては合わないでしょうし、「都度上司の判子が必要になる会社」は自由を好む人にとって居心地が悪いかもしれません。

このように、会社の性格や仕事内容と自分の性格や得意・不得意を擦り合わせていって、しっくりする会社があなたにとって「相性のいい会社」となります。

 

ここまで来たら、あと一息!

「相性の良い会社」で自分のどのような特性が発揮できるかを説明してみましょう。これは強い「志望動機」になります。そして「自分の特性が具体的・客観的に分かるエピソード」を見付け出しましょう。これが「自己PR」になります。

 

「自己分析」は確かに重要なプロセスですが、就職活動ではそれ以上に「会社を知ること」が大事です。就職活動はよく「恋愛」に喩えられますが、「相手を知る・理解する」ことが疎かになると、上手くいかないですよね。

「相性のいい会社」にいきなり出会うことはかなり難しいです。でも一人で自己分析をぐるぐる繰り返しているよりも、働いている人の声を聞きながら社会人になった自分を想像する方が、多分ワクワクできるのではないでしょうか。

 

尚、就職活動の面接の定番?と言われている「あなたをモノに例えると何ですか?」という質問は、1度も訊かれたことがありませんし、自分から発したこともありません。もしこういう質問をされたとしても、アイスブレイク的なものなので、そんなに深く考えなくていいと思います。